【ディスクレビュー】沖ちづる 『わたしのこえ』
19歳のシンガーソングライター、沖ちづる。この名前ですぐに思い当たる人はまだ少ないだろう。それもそのはず、沖が弾き語りスタイルで活動を始めてから、1年ほどしか経っていない。ファーストアルバム『わたしのこえ』には、ギター一本で歌う少し固めで落ち着いた声が詰まっている。
若い女の子の初々しさを期待して手に取ると、恐らくアテは外れるだろう。沖は自分の生活に寄り添った範囲の、実体験に基づいた歌を淡々と歌う。地に足が着いた歌い方だ。
笑われ 貶され それでも歌え
見えぬ光を求め歩くよ
10曲目「光」の歌詞である。歌声と同じ力みの無い等身大の気持ちを、包み隠さずまっすぐに歌っている。
沖自身も公式サイトのインタビューの中で「この歌をずっと歌っていきたい、そうなる曲であると思った」と語っているように、この歌は沖の【決意表明】だ。歌うことへの憧れと恐れ、でも歌い続けるのだという彼女の強い気持ちが描かれている。沖が他ならぬ自分自身と向き合って搾り出した歌詞だ。
19歳の私を振り返る。沖のように恐れながらも希望へ向かう道を私は選べなかった。時間という最大の武器を活かすことが出来なかった。夢を持ち一歩を踏み出す勇気がなかった。それに気づかぬ振りをしてここまで生きてきてしまった私に沖は問いかける。「あなたのこえ」はどんな声?そうして私の耳を奪って離さないのだ。