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自由を拡張していくためのワンマンツアー  パノラマパナマタウン「リバティーvsリバティー」at.下北沢SHELTER



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(すみません、スマホからは上手くツイートが貼れなかったのですが、公式Twitterアカウントから画像拝借いたしました)

 

 ■2017/4/6 パノラマパナマタウンワンマンツアー「リバティーvsリバティー」at.下北沢SHELTER

 

 

神戸で結成された4人組バンド「パノラマパナマタウン」の初めてのワンマンツアー東京編が下北沢シェルターで開催された。名古屋を皮切りに下北沢を巡り、ラストは彼らのホーム神戸という全三ヶ所のワンマンツアー。その二ヶ所目の下北沢シェルターで、パノラマパナマタウン(以下、パノパナ)のワンマンを見てきた。


神戸の大学生で結成されたパノパナは、数多のバンドコンテストで入賞して全国のフェスにも多数呼ばれる注目株。だが今までは軸足がどうしても神戸にあったため、東京で見られるチャンスが少なかった。私も彼らに出会った事の発端は「MASH FIGHT」というコンテストで、決勝へ進む最終予選のステージだった。
そこでがっつりと捕まれたものの、そのあとはなかなか都合が合わず、配信などで追い続けてはいたが少し熱は落ちていた。しかし『PROPOSE』リリースのタイミングで某ラジオ番組のイベントで久し振りにライブを見ることが出来、アルバムも好みだったため私のなかで再び弾みがつき始める。そうしてここ下北沢シェルターで行ったリリース記念の自主企画2マンへ行ったのだが、14曲ほど叩き出された長いステージは素晴らしい内容だった。

 

あのツーマンで見せた屈託のない真っ直ぐさ。どちらかというと楽曲は捻くれているというか、癖があり予想がつかない動きを見せるのに、ステージは驚くほど屈託がなく素直だった。楽しい、今が本当に楽しいとバンド全体が弾むような伸びやかさを見せていた。

そのツーマンに高揚した私は、彼らを支える重要な大人のひとりであるライターの鹿野さんを会場で捕まえて思わず話しかけてしまった。普段なら絶対にしない。そのくらい誰かに感想を伝えたくて仕方なくなる熱いライブだったのだ。余談終わり。

 

 あれから約半年。同じステージを今度はワンマンとして踏む姿を見届けたくて下北沢へ足を運んだ。

  

私が会場に入ると、もう既にかなりの観客が待ちわびていた。客層は若い女子が多い。こういう小さなライブハウスへ縁がない人も多いようで「こんなに近くで見られるなんて」という期待を込めた声も聞こえる。そういう客をここへ引き込んできた彼らの魅力と、沢山のフェスに呼ばれてステージを踏んできた地道な努力に思いを馳せているうちに定刻になった。

照明が落ちると、静かな期待がステージを取り囲むように満ちていく。

パノパナ初めてのワンマンのステージを飾る一曲目は「SHINKAICHI」。彼らの出身である神戸の地名を冠したその歌は、同時に「新たに開いた地」という意味も併せ持つ。神戸というパナマから来た彼らの挨拶がわりの一曲であり、今日からここが、東京が自分達の軸足を置く新しい場所になるという意味も込められていたのではないか。そう思うとこの曲ほどここに相応しいタイトルもない。

続いて「パノラマパナマタウンのテーマ」「MOMO」「シェルター」と彼らを代表する楽曲が次々に続く。えっ、ここでこんなに続けちゃって大丈夫?と思わず言いたくなるような惜しみのなさ。前のツーマンではセトリに散らばしていたこれらを、この日は初手から畳み込むように連発するのを聴いて、彼らがどれほど今日のステージに自信があるのかがわかった。核となる曲を惜しみ無く披露しても大丈夫と言える自信があるのだ。

 

そしてこの予感は外れることがなかった。

 

ボーカルの岩渕がMCで、四人揃って無事に大学を卒業したこと、バンドをやっていこうと決めたこと。そして揃って上京したこと、今日からここをホームとしていくということを改めてファンへ報告する。ドラムの田村とふたりで「なんかすげえ静か」と混ぜっ返していたが、改めて目の前で大切な決意を報告されたら、わかってはいてもなんとも言えない神妙な気持ちになった。

 

そんな気持ちを崩すように「ホワイトアウト」からまた演奏が再開。ここから数曲はパノパナ特有の急な転調(ホワイトアウトは途中で急に盆踊りみたいなリズムがぶちこまれたりする)が顕著な曲が続く。このワンマンで初めて披露した新曲『エンターテイネント』では、初めてでも体を跳ねさせる楽しさが詰まっていた。

 

MCを挟んでまたがらりを空気を変える『真夜中の虹』岩渕が出身の北九州市シャッター街を歌ったというその歌は、緊張感があるメロディで切なくシリアスに歌われるこの曲はこのステージのアクセントであり聞き所のひとつだった。

その空気を引き継いで『パン屋の帰り』『Gaffe』とどっしりとした重さのある曲に継いで『ロールプレイング』というこれまた核になる芯のある曲が続く。この日の『Gaffe』岩渕の「手を挙げろ!」「跳べ!」という煽りは印象に残った。いつも自由に楽しんでくれという、ゆるっとした雰囲気ばかり見ていたので、ああこういう側面もあるのかと新しい発見を……する暇もないまま、観客を巻き込みラストスパートに突入していく。ギターの浪越、ベースの田野も楽曲に集中していて今までに見たことがない横顔が覗いていた。気づいたら鳥肌が立っていた。

 

「四人が初めて作った曲は、曲になっているのかもどうかもわからなかった」「四人で楽しんでいたがらくたが、いつのまにかいろんなひとを楽しませるようになった」という、バンド発足から今までの足跡を素直に話す岩渕と、黙ってそれを聞いている他のメンバーの表情が同じだった。全員が同じ気持ちでステージにいること。どうかこれからもそのままで進んでいけるようにと願わずにはいられなかった。

 

その静寂を破るように最終パートは『いい趣味してるね』から始まり、ゆるっとしたメンバー紹介の『PPT』、ツアータイトルにも絡んでいる『リバティーリバティー』、そして『世界最後になる歌は』で本編が終了した。まだ燃焼するのかと胸が熱くなり記憶が薄くなるような濃縮された時間だった。

実際ここの記憶が曖昧になるくらいステージに夢中になっていて、気づいたら岩渕が観客を割りPA卓に登っていた。満員のフロアを愛しそうに眺めながら『世界最後になる歌はこんなものでは伝わらないかもしれない』と噛み締めるように唄われ、割って入る楽器の音が心臓を直接掴むような気持ちになった。初めてパノパナを見た日からこの曲は本当に名曲だって思っていたけれど、いつの間にかこんな説得力を備えるようになっている成長を目の当たりにして、その素晴らしさにただ見ているしかできなかった。

 アンコールに選ばれた一曲は「オデッセイ」。オデッセイには「長い冒険」という意味もあるらしい。その名の通り、ここから彼らの新しい冒険が始まるのだろう。そしてそれはひと時のものではなく、きっと明るい未来へ続いている。そうあって欲しいと素直に願えるライブだった。
今回のセットリストはひとつのうねりとして完璧できちんとした意思を感じる。まるでこれ自体が美しいストーリーのようだ。

 

「リバティーvsリバティー」というこのツアーのタイトルは、同じ【自由】を意味していても、フリーダムとリバティーでは違うというバンドの姿勢を示しているような気がした。大学のサークルでコピーバンドとして出会い、やっとの思いで初めて作った曲が、思いがけず他人に評価されて拡がっていく喜びと戸惑い。「おれたちだけのガラクタが、悪ふざけが、こんなに沢山のひとに受け入れられた」というその言葉の通り、四人だけのパノラマパナマタウンが少しずつ拡張している。自由に楽しむためにただ与えられたものを享受するばかりではなく、自分たちで動くことで自由を勝ち取り掴むことを知っている彼らは、これからは東京という新境地でまた自由を求めて【拡張】していくのだろう。というよりももう足がかりは充分に出来てるように感じた。ここからまたスタートをきったパノラマパナマタウンの快進撃を素直に期待したい。

 

 

 

natalie.mu

ro69.jp

 

 【MV紹介~コメントは全て公式HPより抜粋】


パノラマパナマタウン / SHINKAICHI(MV)

全編新開地ロケのほぼ白黒短編映画MVとなってます。こだわり満載なので最後まで観てくれよ。

 


パノラマパナマタウン / いい趣味してるね(PV)

 パノラマパナマタウンが世に送るスーパーロックンロールチューン。イワブチにジョン=○ノンが見え隠れすると遠方で噂に。


パノラマパナマタウン / ロールプレイング(PV)

パノラマパナマタウンのロールプレイングのMVです。パノラマパナマタウンの中では、LIVEで盛り上がる代表曲と認識されています。


パノラマパナマタウン / MOMO(MV)

 


パノラマパナマタウン / シェルター(MV)

 


パノラマパナマタウン / いい趣味してるね(PV)

 

PROPOSE

PROPOSE

 

 

 

SHINKAICHI

SHINKAICHI