あなた以外は風景になる

その人以外見えなくなった時のことを書き留めたい

舞台「わたしの星」公開稽古見学記録


f:id:yurivsky:20170815003130j:image

こんばんは。「わたしの星」大好きベテラン女児(優しい比喩)です。
来たね、とうとう帰ってきたね「わたしの星」!!そう叫びながら三鷹のウキウキ通りを爆走したい。勿論そんな名前の通りはない。
しかし三鷹星のホールへ続く長い一本道を私はそう呼びたい。あの道は、幸せへ続く一本道なのだから。

まずは「わたしの星」とは何か?
http://www.mamagoto.org/wh2017.html

夏、未来、宇宙。

火星移住が進み、過疎化した地球に残された高校生たちは文化祭の準備に明け暮れていた。
夏休み最終日、スピカはたったひとりの同級生に転校を告げ、姿を消す。

片思い、叶わぬ夢、帰れない場所。
オーバー・ダビングされた思い出たちが宇宙の片隅で再生される。

星に引力があるように人にもきっと引力がある。
たとえどれだけ離れても、あなたはずっとわたしの星

劇団ままごとが中心となり、現役高校生を集めて演劇の公演を打つというプロジェクトだ。
なんだ要するに高校演劇か、そう思った人ちょっと待って。
高校生が演じるから高校演劇なのだけど、プロの劇団が全面的にそれに関わり、三鷹市がサポートし、お金を取って一般公開する。
商業演劇と高校演劇どちらにも属さないちょっと不思議な所に立つ存在と言える。

高校演劇?商業演劇??と思った人はそこは重要ではないのでさくっと読み飛ばしてください。

とにかく、オーディションでキャストもスタッフ(厳密にはスタッフは演出と制作)も高校生を募り、夏の終わりに10日間の公演を打つ。
それが今月の半ばから終わりにかけて公開される。高校生たちがひと夏をかけた集大成の舞台が始まる。

これに私が撃ち抜かれたのが、三年前2014年の夏。

ままごとの芝居を見たのをきっかけに、このプロジェクトを知った。ままごとの芝居は初めて見てその演劇でしか出来ない表現方法が面白く、情報を追いかけていた。なので、情報が出た時点で「面白そうだし絶対に見よう」と決めていた。そんな時、公開稽古の情報をツイッターで見つけた。
たまたまその日何の予定もなかったので、軽い気持ちで公開稽古を見学し、そのままこの世界にずぽっとハマって何度も観劇しその日々を追いかけたのが3年前。
そんな思い出深い作品が再演されると聞いて喜ばないわけがない。ワクワクしながら赴いた。

公開稽古と銘打たれているが、特に何をしているという説明はない。
演出の柴幸男さんが中心となって、いつもの稽古風景を観客は見せてもらっているだけ。
場面の説明もない。
でもそれがすごく面白い。
見せてはもらえないところ、をそっと覗かせてもらっている感覚。
でも演者はむしろ今までは空っぽの客席へ向けて演じていたわけで、人が入った劇場はよい緊張感で満たされていた。
柴さんは勿論細かい芝居も見ているのだろうが、しきりとテンポを気にしている様子。
足音にまで指示を出していた。確かに演奏も入る劇なので、足音も演出の一部として使っているのはよくわかる。
柴さんが「いつもと(演技が)全然違う。このポテンシャルをいつも出してほしい」と笑いながら言っていた。やはり観客が入れば演者の気合も変わるのはどのジャンルも変わらないのだろう。

止めては繰り返す試行錯誤な前半部分の練習を見た後、休憩を挟んで軽い準備運動、冒頭から30分くらい通して見せてもらう。
いいところでストップがかかる。このチェザー動画(動画ではない)ずるい…ここまで来たら全部見たいよう…。
そして少しだけお客さんから募って質疑応答。

今回はないのかな…と私がおしりをもじもじしかけた瞬間、
「あ、RAPしてないや!しよう!!」という柴さんの一声。待ってました!!と拍手する私。
前回もしていたのですが、芝居のエチュードの一環として「自己紹介RAP」を個人で作り、発表していたのです。
前回はもちろんこんな試みを知らず、公開稽古で見せられて思い切り心つかまれたので本当に嬉しかった…!!
(ちなみに柴さんから提案されたキャストの反応は、前作の時のキャストと全く同じ反応で笑ってしまった)


ここまでが公開稽古の主な流れ。
以下は少々のネタバレを含む、公開稽古を見学しての感想と質疑応答のメモ。
観劇の邪魔になるものではないと思うけれど、観劇予定の方で少しも予備知識がいらないという方は読むのはやめとこう!






今回は前作とまずステージと客席の設えが大きく変わっていた。
中心に長方形のステージを据え、その長辺に当たる部分の両脇に客席が配置されている。
短辺の部分には上映中ずっとキャストが控えている。そして必要に応じて(見ていた限りでは全員がステージに乗っている時以外ずっと?)どこかしらで何かしらの楽器が鳴っている。ずっと曲を奏でているというわけではない。流れている曲に沿って、どこかで生音が鳴っている時間が多いと感じた。
だから、控えているキャストはステージを下りたからといってぼんやりとはしていられない。左右で視線を交わし、合図をし、ステージの上と呼吸を合わせて音を出す。
音楽劇といえばそうなのかもしれない。けれど、今まで見たことのある音楽劇のどれとも違う。
バンドのセッションに近いと思った。
バンドが演奏中、お互いの動きを見て兆しを掴んだり視線で会話しているような瞬間を見るのが大好物なアナタ(わたしのことです)にはお勧めです。見逃せない。
上映時間ずっとこの調子なのだとしたら、これはすごい。幕が開いたら気を抜ける瞬間がない。キャストの松尾くんが「フルマラソンを走っているよう」ってコメントしてたけど、正にそれ!これはスタミナ勝負だよなあと思うし、これを任せてみようと柴さんが思ったのだから、体力と胆力のある子たちなんだろうなと思う。

基本的には高校生の元気さを出している明るい舞台なので、前半は勢いよく笑いもあふれる。疾走感。いや、文字通りステージのキャストは走る。大人になったらこんなに誰かのために必死に走ること、なくなるよなあ。そう気づいて胸が少し痛む。鮮やかなスカートの裾が上品に翻るたび、その躍動感が高校生のリアルだったんだなあと遠い自分に思いを馳せる。

とにかく、いっぺんでキャストの子もスタッフの子も好きになってしまえる、応援したくなる公開稽古でした!最高!!夏最高!!!!「わたしの星」帰ってきてくれてありがとう!三年間ずっと待ってたよ。前作が好きすぎて今回はどうなのか正直不安があったけど、大丈夫。今回も絶対にいい舞台になるし、どっちがどうとかじゃなくて別の作品としてめちゃくちゃ愛せて記憶に残る舞台になると思います。
期待できるし、前作を見てないひとにもお勧めしたい。全身全霊で。
普段芝居を観ない人も、高校生たちのひと夏の10日間しかない世界を一度くらい共有してみてもいいんじゃないかなと思うのでした。




ここから下は更なるネタバレなので、とはいえ私だって今日さわりの部分をちらっと見ただけ。なのでどうなのかわからない推測を含めた部分。
これを知ったから印象が変わるのかっていわれたら大したことないと思うけど、まあ、ネタバレビタイチ嫌な人は以下の部分は回避してほしい。


まず、主な質疑応答のメモ。

・台詞は台本にあることだけを言っているのか
台本にあることを言っていて、演じていて良い台詞があれば台本に足して…を繰り返す。
台本通りやってもいきいきとしない。高校生のリアルな話し方を大切にしたい。

・伴奏をどうやって組み立てていくか
「ここで音を入れて下さい」「うるさいからやめてください」とかやってたらこうなった。
弾きながらやっているイメージがあったから、そうやりたかった。
オーディションで楽器経験を聞いたけれど、楽器が元から出来る人は少ない。

・衣装にこだわりはあるか?
僕はこだわりはないが、衣装さんが決めてくれた。
シャツは3年前の人達の忘れ形見!!!!
制服は揃いなので、どうやって癖を出すかを考えている
腰の位置が高くなっているので、踊りで回った時にふわっとなってかわいいなと思っている(アイドルネッサンス的な感じですよ!!!伝われ!!!!)


・舞台上の男女のコミュニケーションについて
女子が箇条に「キモイ」とか邪悪な部分を増長させる。
時折強烈にDISったりしている。
前回は男子一人だったが、中性感あふれる男子だったのでそんなに気にならなかった
今回は男子っぽい男子で、協力しながら女子に虐げられている。前回よりもクラス感が出た。

・前回はスピカがいたが、今回はいないというのはいつから
最初の方に2014年版をやってみたが、スピカに収まる人がいなかった。
スピカ不在でやってみて、しっくりきた。
今回はスピカという存在を誰かが代わりを担うという話にしてみた。
オーディションのときとか考えていなかった。





これは今日見た中では最大のネタバレな気がするのだが、前回物語の中心にいたスピカが今回は登場しない。
登場しない、とはいないとは違う。いるけれど、その役に該当する人がいないようなのだ。
ようなのだ、とはまあ最初の30分くらいしか見れていないからだ。これがどういう形になるのか全容はわからない。
このことについて柴さんは「2014年版のわたしの星を今回のメンバーで演じてみた。が、スピカに合う人がいなった」と述べていた。
!!!!!
これって、前作のスピカに対する最大の賛辞だよなあ…。
いや、それより「物語の主軸に沿う人をオーディションで選ばなかったんかい!」という突っ込みが正しいのか?

あと、前作では「スピカ」という絶対的な大きな星(引力を持つ者の象徴)が大きく、ストーリーを通して各キャラクターに光も当たるけれどどうしても「スピカとナナホ」の関係に引きずられがちだったが、チラ見したところ今回はその引力の矢印が多くなっている様子。
男の子が複数いることが大きいとも思う。
人間関係の矢印が多いのは散逸な印象を招く危険もあるけれど、でもこれは期待していいんじゃないかな~と感じた。
とにかくこの点にも注目していきたい。