あなた以外は風景になる

その人以外見えなくなった時のことを書き留めたい

mol-74「Morning Is Coming」ツアーat.赤坂マイナビブリッツ 2019/06/07


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 初めてmol-74のワンマンへ行くことにした。メジャーデビューアルバムを携えた全国ツアーの最終日。
ライブは一度だけ、3マンイベントで見たことがあった。音源はその前から聞いていたことがあり、そのイベントもよかったのでワンマンへ行ける機会を窺っていた。二階席を譲っていただいたので、しっかり座って堪能できると期待。

 

 ところでこのバンド名、初見では読めないですよね。「モルカルマイナスナナジュウヨン」だそうです(以下、モルカル)。

 

 最初に謝らなくてはいけないのは、初めて見るワンマンライブなのに私の精神状態が全くフラットではなかったことがある。この2日ほど前に、自分の中で数年にわたり大切にしていた存在のバンドが解散することを発表した。無関係と言われてしまいそうだが、実はモルカルのライブを見たきっかけが、そのバンドとの3マンであったので、どうしてもその頃のことを思い出してしまう。非常にナイーブで不安定な状態でライブを見るのは気が進まない部分が正直あった。全く誰にも責任は無くて私だけの問題なのは承知だが、やや辛い気持ちで二階席に着席した。

 定刻を少し回ったころ、吸い込まれるように光が落ちていく。ほのかな、最小限ともいえそうな光源に照らされたステージから、ゆっくりと音が零れてくる。ずっとライブのみの演奏で、この度のメジャーデビューアルバムに収録された「あいことば」からライブがスタートした。

 曲が終わっても楽器たちが余韻を引いて音を奏で続けているので、あの「エイプリル」のイントロの輪郭に気づいた時びっくりしてしまった。びっくりして、あの曲で一番好きなイントロのドラム聴き逃したのは大変悔やまれる。なんとなくだけど、もっとあとにやるのだと思って完全に油断していた。美しい曲と歌詞。この歌を生で聴きたいな、と思ったのが足を運んだ理由の8割を締めていたので、噛み締めるように聴いた。まさか2曲目でスカートが濡れるほど泣くとは思わなかった(着席で見ていたので)。

 

 涙が出たことで余計な気持ちも一緒に出たのか、そこからはよりステージに集中できた。

 

 モルカルはライブ中、ほぼずっと照明を落とし気味だった。少なくとも2階席からは、あまり表情は見えない。
 MC以外は、曲間でも音が途切れることがなかった。曲と曲が繋がっているように繊細な余韻を残していく。全部の曲がまるでひと繋ぎになっているかのよう。なので、拍手をするタイミングがあまり無い。じっとステージを見守る観客。息を潜めて文字通り「見て」「守る」聖域という印象。でも観客はどこかで自分の存在がステージの上に影響をもたらしているのをわかっている。こういう相互関係もいいな。余白が信頼で満たされている。それが心地よかった。会場に集まった人の大切な場所を覗かせてもらってる気がした。

 我を忘れるような熱狂は無い。しかし、痛いほどに繊細な静けさの中に祈りにも似た感情が満ちていた。そして上の席から見ていると、一見変化の無い観客の中に、あわだつような変化を感じた。暗いとわかっているのに、眼を凝らしてしまうのは何故だろう。視覚的な変化があまり無いせいか、音に集中できる。ぼんやりとした暗闇に、これまた全身黒い服を着たメンバーが立っている。黒にも強弱があるのだ、と気づいた。


 そう、髪色も衣装も黒だし、ステージも基本暗いのだけど、最後に不意に朝日が昇ったような照明になり(なるほど「Morning Is Coming」)と気づく。黒を味方にした4人は、強く照りだした朝日に負けないくらい強くしなやかにステージに立っていた。


 印象的なMCとしては、「Saisei」を出した時、これで何も変化が無かったら解散だって思って、誰の意見も入れずに自分たちのかっこいいと思うものを追求した。そしてこの作品がメジャーデビューに繋がったという話をしていた。そういう覚悟がある人達だから強いんだなって思う。この話からの「□(StarT)」の静謐な空気感、ちょっと忘れられない。熱心なファンらしい隣席の人の肩が、イントロで跳ねた。

 あとアンコール明けに、トーク下手というリズム隊が出てきて一生懸命MCしてて、ドラムの坂東さんがカンペ読み上げてるのに二階席からも見えるほど手が震えてて和やかな笑いを誘っていた。

 

 初めて見られたモルカルワンマン、いいものを見ました。終わった直後より、何故か今の方が印象が強いライブだった。

 

 

 生で聴いても一番好きだった曲を置いておきます。MVもすてき。彼氏目線の女の子はこんなにもかわいいのか。途中のとあるシンプルな【仕掛け】も好きです。


mol-74 - エイプリル【MV】

 

【極私的会場メモ】※立ち寄りの際の情報と個人的な感想なので、現状と変わっているところなどあるかと思いますが、ご参考まで。

待機場所は外(階段)。隣は劇場なこともあり、スペース広め。赤坂サカズなど付近(赤坂駅)にお店アリなので、会場前にトイレも使える。場内バーカンひとつ。ロッカースペースわりと広いし、通路外なので使い勝手よい。

 場内最後方(段の上)は、二階席がわりと低めに迫っているので人によっては圧迫感感じるかも。